Chapter 01
学者肌の父と和の世界の母の間で
実存主義にかぶれ、哲学科をめざすが挫折を味わう
「読書が大好きで、早熟な小学生でした」。父は、実業家として経営に携わっていたが、本来は芸術至上主義で西洋文化が好きな学者肌。一方、母は、船場の商家の孫娘として育った大衆的な人。そんな二人の間で、3人姉弟の長女の林は、父とクラシックを聴き、洋画を見て、母には時代劇映画や歌舞伎につれていってもらいと、異国と和の2つの文化を豊かに吸収して育った。
「腕に生まれつきの赤いアザがあるのです」。冬になるとアザは紫がかり、幼稚園で男の子と行進するときに手をつないでもらえなかったような記憶がある。「まわりからは快活に見えても、自分の中にどこか暗いものがあったように思います。三枚目で冗談をいって笑いをとろうとする自分とのギャップを常に抱えていました」。
「頭でっかちで、小生意気で変な女の子だったんでしょうね。実存主義にかぶれて、哲学科に入りたかったのだけれど、落ちてしまいました」
区立中学から才媛が集まる国立の高校に進んだが、「次第に落ちこぼれていった」と林はいう。好きなことには夢中になるが、それ以外は勉強しなかった。